ニューハンプシャーのMt. Washington(1917m)は、ニューイングランドの最高峰です。4000m級の山がごろごろあるコロラドなどに比べるとそれほどの高さではありませんが、この山は非常に過酷な天候や暴風で知られ、1934年4月に頂上で観測された時速231マイル(372km)という地表最大風速は、1996年にオーストラリアのバロウ島で台風時に記録された時速253マイルに破られるまで、62年間世界記録でした。気温も地上より20°Fは低いと考えた方がいいといわれますが、山頂には車で登ることができるほか、登山鉄道も通っているので、ただ頂上にいくのが目的なら、それほどたいへんではありません。もちろんそういう楽しみ方もいいと思いますが、ハイカーならぜひとも自分の足で挑戦したいところ。汗をかきながら苦労してピークを踏む達成感はなにものにも変え難いものです。
また、この山は上の方にいくと「カール」と呼ばれる地形の壮大な景色が広がります。「カール」(ドイツ語)は、氷河の侵食によってできた、スプーンでえぐったようなお椀型(半円状)の地形で、英語では「サーク」(Cirque)、日本語では「圏谷」(けんこく)と呼ばれます。
●エリア:White Mountain National Forest (NH)
●ルート:Mt. Washington via Tuckerman Ravin(ピストン)
●距離:8.4 mile
●標高差:4250 ft
●難易度:🌠🌠🌠🌠
●登山口:AMC Pinkham Notch Visitor Center
トレイルヘッドはAMCのピンカム・ノッチ・ビジター・センターからつながっています。車はビジターセンターに駐車しますが、夏場は早朝に行かないとすぐ満杯になるので要注意。それと、天候が変わりやすい山なので、できれば前日にビジターセンターのカウンターで翌日の予報を確認するのがお勧め。
歩き始めてしばらくすると、川やクリスタル・キャスケード(滝)を通過し
さらに歩き続けていると、だんだん視界が開けて、周囲の尾根がみえてきます。
ライオン・ヘッド・トレイルとの分岐を超えると
ハーミット・レイクとシェルターです。シェルターは景色がよく、ベンチもあるので、休憩に最適。
この時点で、Ravine(渓谷の底)まで0.7マイル、ワシントン山まで1.8マイルの表示。近くに水場もあります。
カールの底の方までやってきました。
この先は長い岩場の登りが続きます。
この辺になるとはっきりカールの全体像がみえてきます。
頂上まであと0.6マイル!
ようやく、すぐそこがピークだと思ったら…
え、あれは車?
そうなのです。たどりついたところは普通の山頂とはずいぶん雰囲気が違います。舗装された車道があり、鉄道の駅もあって、大勢の人が車であがって来ていました。
山頂のサインは、このTip-Top Houseと書かれた小屋の横にあり、記念写真を撮ろうとたくさんの観光客が並んでいました。Tip Top Houseは米国で最も古い山頂の建物の一つで、ワシントン山で最初のホテルだそうです。
とりあえず、私たちもジーンズやスニーカー姿の観光客と一緒に並んで登頂の証拠写真を撮り、その奥にある大きな建物のなかへ。Sherman Adams Summit Buildingと呼ばれるこの建物は、大きなビジターセンターで、食堂やトイレのほか、売店やみやげ物屋などがあり、人で溢れかえっていました。ここで持参したランチと購入したスープで腹ごしらえです。
頂上から目を凝らすと、どんどん車が登ってくるのが見えます。なんとラクそうな…。私たちも、つい下界と同じような感覚になって、一瞬「下りは登山鉄道を使おうか…」なんて考えが頭をよぎりましたが、中途半端なことをすれば後で後悔することになるので、結局ちゃんと歩いて下ることに。
山頂からの景色を目に焼き付けた後は、意を決して、再び歩き始めます。
また、だんだん巨大なお椀のなかに吸い込まれていく感じです。
そして、再び森林地帯にもどり、
THへ。
長いハイクでしたが(コースタイムは往復8時間)、カールの中を歩くというのは貴重な体験で、景色も素晴らしかったし、また行くとしてもやっぱり自分の足で歩くと思います。