ヨセミテ国立公園のなかには非常に歴史と由緒のあるアワニー・ホテル(The Ahwahnee)があります。1927年にオープンした老舗で、これまでにJ.F.ケネディ大統領や英国のエリザベス女王のほか、数多くのセレブリティが宿泊し、「アメリカ人が一生に一度は泊まってみたいホテル」に必ずや選ばれる名門ホテルなのです。それだけに、なかなか予約がとれない。よしんば取れたとしても、非常に高価で庶民にはとても手が出なかったりします。それでもガイドブックなどには「見るだけでも行ってみる価値がある」と書かれているし、ここのダイニングルームで食事を体験することが勧められている。
というわけで、私もせっかくヨセミテに行くのだからと、ディナーの予約をいれました。ところが、ここで一つ問題が。このホテルのダイニングルームは、食事をする際のドレスコードがあるのです。特に夜は、「リゾート・カジュアル」とされてますが、女性の場合、ドレスまたは、スカートかロングパンツにブラウスの着用が求められています。私だって、ニューヨークでは四つ星レストランに行くこともあるし、そういうエレガントな装いができない訳ではありませんが、なんといってもここはヨセミテ。山登り好きな私としては、早朝から夕方まで思う存分ハイクをしたい!と、かなり前のめりで乗り込んでいる訳です。つまり昼間はずっとハイキングパンツに登山靴をはき、バックパックを背負って歩き回っていて、大量の汗もかいている。その後でこういうレストランで食事をするには、シャワーを浴び、着替え、きちんと化粧などして出向く必要があります。このホテルに宿泊しているなら、それも問題ありませんが、パークの外に泊まっている身としては、そのために片道30〜40分かかるビレッジと自分のホテルの間を行ったり來たりしなくてはならず、時間的にかなり効率が悪い。「朝、着替えを持ってホテルを出て、食事の前にどこかのトイレで着替えればなんとかなるのではないか…」とか、「カレービレッジにある公共プールのシャワーを使えるのではないか…」とか(冬は閉鎖されていた)、いろいろと考えてみましたが、どれも無理がある感じで、なんといってもそのために一番やりたい山登りの時間を削らなければならないのが辛い。
さんざん悩んだあげく、直前になって出した答えは「ディナーはキャンセルし、翌朝のブレックファストに変更する」というもの。朝食なら、起きてすぐシャワーを浴びて身繕いしていけばよく、ドレスコードも「カジュアル」とディナーより少し緩くなるので、靴さえ履き替えればその後で外を歩き回ることもできる。ダイニングルーム自体は同じ場所だし、素晴らしいホテルの中も見て回れるという訳。
運良く予約も取れ、結果的にこれは大正解でした。
そしてこれがその「ダイニングルーム」です。かなり早朝だったのと、あまりお天気がよくなかったので少し暗めですが、天井が高く、重厚感が半端なかった。「短パンにビーサンとかでは来てくれるな」といいたくなるのもよく理解できます。
食後にはホテル内のパブリック・エリアを見て周りました。誰もがくつろげる「グレートラウンジ」には、先住民のアートワークや工芸品が飾られ、暖炉にはちゃんと火がはいっていました。また、ギフトショップとは別にちょっとしたスナックや飲み物が買える「スイートショップ」というのがあり、ここで他では見なかった缶入りのヨセミテ・ワインが買えたので、いいお土産になりました。
アワニーホテルに関して私と同じような悩みを持った方、この朝食戦略はなかなかのお勧めです。