アメリカの大自然の中を歩いていると、かなりの頻度で大きなシカ科の動物に出くわします。普通の鹿はわかりやすいけれど、鹿よりも大きいムースやエルクとなると「どっちがどっちだったっけ?」となりがち。またヨーロッパと北米では、同じ言葉でも違う動物を指すことがあるようで、ますます混乱してしまいます。ここでは米国で一般的な呼び方をもとに、あらためてその違いを整理してみます。
まず、シカ・ファミリーで一番大きいのがムース(Moose)。5〜7フィート、840〜1550ポンドもあるので、大柄なものはほんとにびっくりするくらい巨大です。草食系なので人を襲うことはまずないといわれていますが、非常に臆病で、逃げるときに直進していくため、その時に人を傷つけることがあります。なので、見かけた時は、脅かさないように静かに、離れた場所から見守るのが安全です。
顔の特徴は丸みを帯びた大きな鼻で、長い馬面。鹿とは顔つきがちょっと違います。喉に肉垂れもあり、肩は盛り上がって、色は一般的に濃いブラウンや黒などダーク系(ただし超レアなホワイトムースというのもいます)。オスの見分けやすい特徴はアンティラで、手のひらのように広がった巨大なツノを持っています。平たいヘラのようなので、日本語ではヘラジカと呼ばれます。
ちなみに、暖かいダウンジャケットなどで人気のあるカナダのブランド「ムース・ノックルズ」はムースの足跡を意味し、ロゴも雪の中にひずめの形しか残さないヘラジカの足跡がモチーフになっています。
一方、エルク(Elk)は、4〜5フィート、485〜730ポンドと少し小さめで、顔はより鹿に近く、鼻も犬とかに似た感じです。体の色は黄色っぽいブラウンですが、お尻が白いのが特徴。冬毛になると首に濃い色のたてがみが生えて襟巻きのようになります。ワピチ(Wapiti)とも呼ばれ、これはアメリカインディアンの言葉で「白い尻」を意味するそうですが、米国ではエルクの方が一般的な印象です。既知のシカの中では遺伝的に最もニホンジカに近いのだそうです。またヨーロッパでエルクというと、アメリカでいうところのムースを指しますが、アメリカ人がエルクという時は、このお尻の白い大鹿のことです。
ついでに、鹿のファミリーにはトナカイというのもいますよね。クリスマスにサンタクロースのソリを引いてくるといわれるアレです。彼らは、英語でレインディア(Reindeer)やカリブー(Caribou)と呼ばれ(両方とも同じもの)、レインディアはヨーロッパでの呼び方だと書かれた資料もありますが、米国でも普通に使われています。ツンドラなど寒帯や亜寒帯に生息するので、一般的なハイキングシーズンに米国のトレイルを歩いていて出くわすことはあまりありませんが、鹿よりも少し大きめで、エルクよりは細身。シカ科で唯一、オス/メスともにツノがあります。頭部の色が体より濃く、首に白っぽいタテガミを持っていることが多いようです。遠目では、このタテガミが白っぽいか黒っぽいか、お尻が白いかどうかがエルクとレインディアを見分けるポイントになりますね。
ということで、だいたいの大きさで全部を比べてみると…
おぉ、やっぱりムースは圧倒的にデカイ!
こうしてみると、ムースはファミリーのお父さんで、普通の鹿は赤ちゃんのように見えますね。